Das Glasperlenspiel

○ドイツの小説家へルマン・ヘッセの大作「ガラス玉演戯」を考察しています。ヘッセの他の著作についても、「ガラス玉演戯」と絡めて解説します。

『東方巡礼』 サーヴァントへの試練

  『東方巡礼』はヘルマン・ヘッセの著作のなかでも特に難解なストーリーを持つ作品です。まずは簡単にあらすじを押さえます。

 

東方巡礼の簡単なあらすじ

 主人公H・Hはとある結社に所属し東方巡礼という旅に参加するが、途中、召使いの一人であるレーオが失踪し、それをきっかけに巡礼団は崩壊してしまう。

 主人公はその後、東方巡礼を手記にまとめようとするが、失敗に終わった巡礼を書き著すことが出来ずにいた。しかしある時、主人公は失踪したレーオと邂逅を果たし、結社と巡礼について訊ねるが、レーオは取り合ってくれなかった。

 主人公は自身の後悔をレーオに宛てて手紙にし、それを受け取ったレーオは主人公を結社の幹部に引き合わせる。そしてそこで、実は召使いとして巡礼に参加していたレーオこそが、結社の盟主であったことが明かされる。

 東方巡礼の手記が書けずに苦悩していた主人公に、その絶望こそが結社の用意した試練であったことが告げられ、主人公は結社の幹部として迎え入れられる。

”「東方巡礼」は、筋の書きようがないほど、ひょうびょうとした、現実と空想の交錯した、無定形的な作品である”ー「ヘッセ全集 別巻 ヘッセ研究」P.210

 訳者である高橋健二先生をして、「筋の書きようがない」と言わせた本作ですが、単純化すると上述の通りとなります。しかし、本作の主題は「東方巡礼とは何か?」となります。

サーバントリーダーシップ

 召し使い(サーバント)のレーオが、実は結社の盟主(リーダー)であったという構図は、ロバート・K・グリーンリーフが提唱したリーダーシップ哲学「サーバントリーダーシップ」でも紹介されています。

 この場合、レーオはリーディング・サーバントと呼ばれ、リーダーは導く(リード)よりも仕える(サーバント)ことに注力することで、組織全体のパフォーマンスの最大化を目指します。

 

原題:Die Morgenlandfahrt 1932年

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『知と愛』 人類の母イヴと聖母マリア

 『知と愛』の原題は「ナルチスとゴルトムント」ですが、翻訳者でヘッセ研究の第一人者でもある高橋健二氏によって、現在の邦訳名になっています。また、本作が刊行される前に雑誌で連載されている頃は「友情の物語」という副題が付いていたこともあり、神学者で思索家でもあるナルチスに知を、芸術と放浪に生きるゴルトムントに愛を象徴させ、両者の友情を描いた物語として解説されています。

 しかし私は今回、『ガラス玉演戯』と結びつけたいという思いもあり、訳者とは別の主題を見つけて考察しています。

”すなわち、芸術は父の世界と母の世界との、精神と血との結合であった”ーP.201

 このとき、「父の世界」とはキリスト教的秩序となり、「母の世界」とは世俗的な自然と愛を「聖母マリア」によって肯定してもらうことです。

 

 

原題:Narrziss und Goldmund 1930年

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第一章 「召命」 教育州カスターリエンの教育制度

 小説『ガラス玉演戯』の物語は教育州カスターリエンという架空の学園都市(州)で展開されます。こちらの章では主人公ヨーゼフ・クネヒトが教育州カスターリエンの英才学校に入学し、教育課程を終えて、研究課程に臨んでいく準備期間が描かれています。 

 教育州カスターリエンには、教育庁と宗団があります。基本的には映画「スターウォーズ」の、ジェダイ評議会とジェダイ寺院をイメージしてもらうと簡単です。宗団員はお金や物の個人所有を禁止され、結婚もできません。

 

 

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『シッダールタ』シッダールタとゴータマ 二人のブッダ

 へルマン・ヘッセの作品のなかでも特に人気があるのが『シッダールタ』です。世界中の言語に翻訳され、インドでも人気があるそうです。
 本作の主人公であり、タイトルにもなっている「シッダールタ」ですが、これは仏教を開いたブッダの出家前の名です。なので、ブッダ(覚者)が悟りを得るまでの物語として紹介されることも多いのですが、実際にはヘッセの創作したフィクションです。
 こちらの物語は、仏教を含めたインドの宗教や哲学をヘッセが独自に解釈し、「シッダールタ」の名前を借りて自身の宗教体験を告白する二次創作のような作品になっています。

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序章「ガラス玉演戯」 小説『ガラス玉演戯』の目的

 小説『ガラス玉演戯』では、伝記の形式を装って物語が進められます。序章にあたる部分では、その導入として[ガラス玉演戯]の具体的な方法や、発展の歴史、意義や基本理念についてまとめられています。

 しかし、この序章部分はヘッセの作品の中でも特に難解な表現に終始し、はっきり言えば不親切な解説になっています。ヘッセはこの序章で読者を選別しているのでは?とも勘ぐってしまいます。

 読者の知りたいことは瞑想法[ガラス玉演戯]の具体的な方法なのですが、読むほどに煙に巻かれて結局何なのか分からなくなります。ですが、これも序章を良く読めば分かることなのですが、主人公であるガラス玉演戯名人、ヨゼフス3世の生き方が[ガラス玉演戯]の理想の体現であることが示されています。

prologue

 

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『デミアン-エーミール・シンクレールの少年時代の物語』自己の完成

 『デミアン』はヘルマン・ヘッセの小説の中では世界中で人気のある作品です。最近のアマゾンの売れ筋では、「シッダールタ」「荒野の狼」「ガラス玉演戯」「車輪の下」に混ざって、上位の方で本書が出てきます。

 『デミアン』は第一次世界大戦中に執筆された作品で、内容的にはかなりショッキングな作品です。ヘッセははじめ、「エーミール・シンクレール」という偽名を用いて、戦闘で負傷した兵士が野戦病院で手当てを受けながら、昔を回想し執筆した作品のように偽装して本作を発表しています。

 内容としては、カイン宗徒(グノーシス主義)やアプラクサス(ABRAXASはグノーシス主義)について言及しながら物語を進めています。登場人物の一人であるエヴァ婦人を「万物の母」と形容したりと、かなり攻めています。(イブは人類の母です。万物の母は「物の母」なので、別物です。)

 「デミアン」自体がデーモン「悪霊にとりつかれたもの」から出ているとヘッセ自身が語っています。カイン主義は、「人類最初の殺人」を犯したカインの方こそ、高貴な人間とする異端の考えです。しかし、当時は大戦中で同じ信仰を持つ同胞・兄弟同士のキリスト教徒が敵味方に別れて殺しあっている状況でした。

 もはや、カインやアベルがという神話とは関係が無く、実際に兄弟殺しが行われている世界でした。

原題:Demian: Die Geschichte von Emil Sinclairs Jugend 1919年

 

 

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敬虔主義と陰陽五行思想 主人公の学生時代の研究②

 主人公のヨーゼフ・クネヒトは、研究時代にその成果として「三つの履歴書」を提出しますが、その後は18世紀の敬虔主義を研究し、また、シナ語を研究している老兄を訪ねて易経を学びます。

 この敬虔主義研究は特に、ルター派プロテスタント神学者、ヨーハン・アルブレヒトベンゲルという聖書学者に関するものです。

 そして、易経とは陰陽五行思想を基本にした、64卦の竹板を用いる占いのことです。キリスト教圏では、善と悪とを明確に分けてしまうので、陰陽のバランスという発想に乏しいです。

 

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